自然界の窒素循環は微生物・細菌が担っている!?

6/19/2024

教育 自然

雨に濡れた水色のアジサイ
雨上がりのアジサイ
青から水色へのグラディエーションライン
大気/空気中の『酸素』のことや温暖ガスとして敵視される『二酸化炭素』のことを意識することはありますが、多くの人々は78%を占めると言われる一番大きな構成要素である『窒素』のことを考えることは殆どないのではないでしょうか。

地表付近の平均的な大気の成分の円グラフ
地表付近の平均的な大気の成分
(北海道環境科学研究センター資料)
(クリックして拡大)
上の円グラフで分かりますように、地表付近の大気中には命綱の酸素が約21%ありますが、地球環境を破壊する元凶と集中砲火を浴びている二酸化炭素は0.03%(最近では、急速な二酸化炭素の増加によって、二酸化炭素は0.03%→0.04%に上がっているとも言われています)しか存在しません。何故、圧倒的な占有率を占める窒素は話題に上らないのでしょうか…

窒素(Nitrogen、N₂)の性状は、
 〇無色・無臭の気体 …沸点はマイナス195.8℃
 常温では化学的に不活性(反応しない)
 〇高温下で酸素と化合
 〇高温、高圧下では水素や金属と化合
となってますが…化学の分野に詳しい人でもなければ具体的なイメージは湧かないかもしれませんね(^^;)

身近なことで理解しようとしますと、
自然界では安定した気体なので危険性がなく、微生物・細菌の働きによって反応性の高い窒素化合物=アンモニア(NH3)、硝酸塩(NO3-)、二酸化窒素(NO2)などに変換されて生物にとって重要なアミノ酸・タンパク質などの要素となり、アンモニアは肥料などに使われます。

ここで驚きのような感覚に捉われますことは、微生物・細菌が不活性な窒素分子から窒素化合物を作り出すことではないでしょうか。

更に、それらの化合物を窒素分子へ分解する働きも微生物・細菌が担っていることです。

つまり、単純な表現では、
『微生物・細菌が大気中の窒素を生物が使える形にし、その形のものを最終的には微生物・細菌が窒素に分解して大気中に戻す』
ということです…これが下の図に表される『窒素循環』と言われるサイクルですね。

地球上での窒素循環の図式
窒素循環(Wikipediaより)
(クリックして拡大)
【窒素循環】とは…日本大百科全書より
 自然界における窒素は、大気中の分子状窒素をはじめ、硝酸などの無機窒素化合物、タンパク質や核酸などの有機窒素化合物など、多種多様な物質として存在する。窒素は、これらの異なった物質に形を変えながら、大気中、生体内、あるいは土壌や水中を循環しているわけであり、この現象を窒素循環という。

 窒素は化学的に安定な元素で、分子状の窒素ガスとして空気の約80%を占めている。窒素ガスを直接窒素源として利用できる生物は、ごく限られた種類の細菌、根粒菌、放線菌、藍藻(らんそう)類などにすぎないが、これらは、安定な分子状窒素を他の窒素化合物に変える重要な役割を果たしている。大気中には、少量ではあるが硝酸などの無機窒素化合物が存在し、降雨や塵(ちり)とともに地上に運ばれる。この大部分は地上から放出されたものであるが、一部は大気中で放電や紫外線の作用によって形成されたものである。

【窒素固定】とは
 大気中に約80%含まれる安定した(化学反応しにくい=不活性)窒素分子(N2)を反応性の高い窒素化合物=アンモニア(NH3)、硝酸塩(NO3-)、二酸化窒素(NO2)などに変換するプロセスのことで…それは主に微生物・細菌によって行われています。シアノバクテリア(藍藻)という細菌が「窒素固定」を行っているそうです。
 この窒素固定によって、窒素が生物体内で利用可能となるわけですね。

N₂の特性を利用した用途は多岐にわたります。

  1. 熱処理
    鋼材などの改質を行う熱処理において、これまでの石油系ガス、アンモニアなどに代わり、作業の安全性、簡便性などの点で優れている窒素ガスをベースにした熱処理を行うことが多くなっています。
  2. ガラス製造
    自動車、建築などの分野において、歪みのないフローガラスはこの30年間で急速に普及しました。このフローガラスは、溶融ガラスの表面を窒素で不活性にして製造します。
  3. 保安
    LPG、LNGなどの可燃性ガスの配管、貯蔵タンク、タンカーなどの定期修理や洗浄の際に、火災や爆発を防止するために窒素を送り込み、一時的に不活性雰囲気を作りだします。
  4. 食品酸化防止
    コーヒー、スナック菓子などの食品は酸化すると風味や品質が劣化します。酸化防止のために最近では酸化防止剤に代わり、包装中に窒素を封入することで酸化を防ぐ方法がとられています。
  5. 缶の圧力源
    薄くつぶれやすいアルミニウム缶に炭酸を含まない飲料を充填する場合、缶をつぶれにくくするとともに品質を保持するために窒素を封入します。
    空気の場合は、酸化の問題と温度によって膨張・収縮を起こす問題がありますので使えません。
  6. 食品冷凍保存
    冷凍食品を製造・保存する際にも窒素が必要です。
    魚介類、肉類などの生鮮食品や惣菜類、麺類などの調理食品は液化窒素の冷熱を利用して急速に凍結することで、長期間品質を保つことが可能になりました。
  7. 生体組織冷凍保存
    液化窒素を使って動植物の組織を冷凍保存することができます。
    例えば、家畜の品質改良では、優秀な家畜の精子、卵子を冷凍保存し受精させるという技術が利用されています。
    また、不足気味の輸血用血小板、さらには移植用骨髄、角膜などを液化窒素の極低温で保存することで、必要な時に利用することができます。
  8. コンクリート・クーリング
    コンクリートを練る時に発生するセメントと水の反応熱は、固化後のひび割れの原因となります。
    そこで、フレッシュコンクリートを液化窒素で噴射冷却することで、この固化後のひび割れを防いでいます。
  9. 溶剤回収
    各種塗料、磁気テープ、粘着テープ、感光性フィルムなどの製造時に使用されるトルエン、MEK、アノンなどの可燃性有機溶剤を窒素ガス雰囲気中で安全に保持し、液化窒素の冷熱で廃溶剤を凝固回収。 大気汚染防止と資源の節約に役立てています。
  10. 銅のサブゼロ処理
    銅は熱処理後、放置すると経時変化を起こし、形状、寸法、硬度が変ってしまいます。
    これを防ぐために熱処理後の銅を液化窒素で急激に冷却する「サブゼロ処理」を行うことにより、金属組織を安定させることができます。
  11. バリ取り
    これまでゴム製品のバリ取り処理はひとつひとつを手作業で行っていたため、非常に手間と時間がかかりました。
    そこで、ゴムが極低温で脆化するという性質を利用して、液化窒素の冷熱でバリ部分をもろくし、プラスティックの粒を高速でぶつけるという方法を採用。自動的かつ大量のバリ取りを行うことを可能としました。
  12. 半導体製造
    ますます微細化が進む半導体の製造プロセスでは、窒素が欠かせません。
    その代表的なものに、ウエハにパターン形成を行う処理工程で、毒性・可燃性の高い材料ガスを製造設備内に供給するためのキャリアガスとしての使用があります。
    また、各工程の中で、ウエハ表面の酸化を防止することや、装置内や配管内から材料ガスをパージするといった用途にも使われます。
  13. ヘルスケア
    医療用窒素は「純生空気(合成空気)」の窒素成分として医療用酸素と混合して使用されるほか、冷凍手術や医療器具の駆動用としても使用されます。

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