上海には、日本語を話せる方が驚くほどたくさんおられます。
私は常々、中国を十把一絡げに語るのはよくない、と社員の中国人たちに言っています。
「中国ではね……」などと安易に言い出した瞬間に、多様性という巨大な現実に足をすくわれるからです。
……もっとも、言っている本人が、ついウッカリ
「中国では……」
と口を滑らせてしまい、慌てて言い直しては反省する、という情けない場面も少なくありません^^;
中国には、本当にさまざまな地域があります。
青い目の人々が暮らす場所すらあるのですから。
多様性が凝縮された都市・上海
その点、上海はとりわけ多様性の坩堝です。
中国各地から人が集まり、その“上海の中”自体がすでに一つのモザイクのような大都市になっています。
同じ仕事が北京にもあるにもかかわらず、長年住んでいた北京を離れ、わざわざ上海に移って仕事をしている方もいます。
事情は人それぞれでしょうが、それだけこの街に惹きつける何かがあるのでしょう。
銀行窓口での、あの赤面
話は少し変わります。
上海の銀行は、待ち時間の長さに目をつぶれば、なかなか便利です。
至るところにあり、平日は夕方5時まで、土曜日も営業、日曜日も開いているところがあったような……気もしますが、そこは記憶がやや曖昧です^^;
今年の2月、日本からの出張者が人民元への両替のため、ある銀行へ行きました。
四大銀行の一つですが、日本人のあまり来ない地区の支店です。
窓口では英語が通じることも珍しくないので、彼は英語で両替を頼み、日本円とパスポートを渡しました。
手続きには時間がかかります。
暇だったのでしょう。
彼は、窓口担当の女性について、日本語で感想を語り始めたのです。
「清楚で真面目そうだな」
そのうち、
「こういう女性とお友達になりたい」
などと、だいぶ余計なことまで言い始めました。
確かに、清楚で誠実そうな女性でした。
やがて書類が整い、彼女は用紙を差し出して、こう言ったのです。
「ここと、ここにサインしてください」
……一瞬、空耳かと思いました。
彼女は日本語ができるはずがない、という強い先入観があったのです。
少し上目づかいで、どこか愉快そうな表情を浮かべて、彼女はもう一度言いました。
「ですから、ここと、ここにサインしてください」
完璧で、きれいな日本語でした。
「ニ、ニホンゴ……おできになるんですか!?」
「できます」
その一言で、彼の顔はみるみる赤くなり、火照っていくのが分かりました。
まあ、彼女もなかなかの人ですよね。
だって、最初にパスポートを渡しているのです。
日本人だと分かっていたはずなのですから。
最初から日本語で話してくれても、よかったのでは……と、心の中で小さく抗議したくなる気持ちも、分からなくはありません(-_-;)
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| 日本固有種のヒメウツギ(姫卯木) |
似たような出来事は、突然に
なぜ今になって2月の赤面事件を思い出したのかというと、
昨日、よく似た場面に遭遇したからです。
10階の業務用エレベーターの踊り場でタバコを吸っていると、若い女性が遠慮がちに声をかけてきました。
……残念ながら、何を言っているのかさっぱり分かりません。
英語はできますか、と聞くと「少しだけ」とのこと。
何とか意思疎通はできました^^;
彼女はトイレを探していたのです。
このビルは商住兼用で、各部屋にはトイレとシャワーがありますが、共用トイレはありません。1階にはあるかもしれませんが、確認したことはありません。
事情を説明し、
「よろしければ、私の事務所のトイレを使ってください」
と親切心で言ったところ、彼女に一瞬、緊張が走るのを感じました。
……そりゃそうですよね。見知らぬ男性の事務所に入って、何があるか分かったものではありません。
それでも切羽詰まっていたのでしょう。
「お借りします」
そう言って、彼女は事務所に入ってきました。
私は、彼女の緊張感を和らげるため、ドアを開け放しておきました。
社員が、なぜか無反応
事務所にいた社員は、誰一人としてこちらを見ません。
いつもなら「どなたですか?」と興味津々なのですが……余程忙しかったのでしょう。
社員は、誰が来たのかも聞かず、仕事の話をしてきたので、私たちは日本語で大きな声で話していました。
やがて、彼女がトイレから出てきて、遠慮がちに言いました。
「あのう……」
……あのう?
空耳かな、と思いつつ、私は英語で
「トイレは済みましたか?」
と聞いてしまいました……まあ、済んだから出てきたのでしょうが。
彼女はもう一度、
「あのう……」
と言います。
さすがに鈍感な私でも、これは日本語だと気づきました。
「先ほど、日本語で話しているのが聞こえました。
私は日本語ができます。上司が日本人です」
と、実にきちんとした日本語で話すのです。
私は驚いて、日本語なのに、しどろもどろになってしまいました(^^;
後になって、冷や汗が出ました。
社員が「今の方は誰ですか?」と聞いてこなかったことに、心から安堵したのです。
私は冗談が大好きな人間です。
もし聞かれていたら……
きっと、後で自分が赤面するような冗談を言っていたに違いありませんから。

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