ツツジ |
(2010年1月8日にHPに掲載したものです)
新潮選書の『ギャンブル依存とたたかう』
本屋で資料を探していたときに面白そうな本が目に入りました。新潮選書の『ギャンブル依存とたたかう』という本です。
本の値段は1000円+消費税です。
著者の帚木蓬生(ははきぎほうせい)氏は大学の文学部と医学部を卒業され、小説も書かれているお医者さんです。
お目当ての資料はありませんでしたので、その本を買って、さっそく読みました。
(読み進めてみると分かりますが、帚木先生は医学にもまして作家として豊かな才能がお有りのようで、とても読みやすい本です)
病的賭博
なお、ギャンブル依存症の正式病名は「病的賭博」と言われるそうです。帚木先生は、その方が病気という認識を患者が持つから良いと言ってます。
帚木先生は、環境次第で誰でもギャンブル依存症になってしまう可能性が充分あると言っています。
恐いですねぇ~。
ギャンブル依存症は、
本人だけではなく家族・親兄弟(姉妹)・友人・親戚等をも悲惨な状態に陥れてしまう傾向にあります。
本の中では「ある主婦の転落」という項目の中で、パチンコ依存症になってしまった結果、借金に追われ、子供は放ったらかしで、ついには夫と子供に離縁されてしまうという悲惨な実例が紹介されております。
でも、その主婦の方は犯罪を犯してしまうという最悪のケースまでには至らなかったようですので、まだ救われるのかもしれませんね。
判断テスト
ギャンブル依存症に陥っているいるか否かの判断テストが幾つか紹介されています。テスト自体は簡単な内容で、質問に対し答えてゆく形式です。
例えば、米国精神医学会が1994年に刊行した病的賭博の診断方法があります。
次の10項目中、5項目以上に該当すると病的賭博と診断されるそうです。
- 常にギャンブルが頭から離れない
- 賭ける金額を増やさないと満足しない
- ギャンブルをやめようと思うがやめられない
- ギャンブルをやめているときイライラする
- 嫌な問題や気分を紛らわすためにギャンブルをする
- ギャンブルで損した分をギャンブルで取り返そうとする
- ギャンブルをしているのに、していないと嘘をつく
- ギャンブルに使うお金を工面するために違法行為に走る
- ギャンブルのために怠業したり、約束を破ったりする
- ギャンブルで金をなくし、他人のお金にまで手を出す
夢中になっていた一時期は、項目1にも該当しました。
私自身はギャンブル依存症だと思っていましたが、上記の診断結果では、どうもそうではなかったようです。
飽きっぽい性格が幸いしているのかもしれませんね。
ギャンブル依存症における最大の問題は、特別ほかにやりたいことが無くなってしまう、
ということではないでしょうか。
漠然とした疎外感ー孤立感を抱いている人々がイメージされませんか?
日常生活に浸透しているパチンコやスロットの場合、家を建てられるほど儲けられるわけはありませんので、金儲けのためにシャカリキになってやっているとは考えられません。
パチンコ依存症の方は、多分、他にやりたいことがないのでしょう。
(あるいは、逃避行為)
ギャンブル依存症とは
家庭的・社会的なトラブルを抱えてしまった、あるいは、抱える大きな可能性をもった状態を言いいます。依存症自体はギャンブルだけではなく色々な分野でありますよね。
例えば、アルコール、タバコ、コーヒー、仕事、テレビ、麻雀(ギャンブル?)、ゲーム、ゴルフ、テニス、買い物などの依存症に罹る人達がいます。
しかし、本当に好きで精神状態が向上することでしたなら問題ない、いやむしろ、趣味として大いにやればいいわけです。
問題は、逃避的な行為か否かということではないでしょうか。
嫌なことから逃れられる為に感じる満足感ー忘我の境地に陥るような対象をたまにやるのはイイでしょうが、週3回以上やりつづけますと問題かもしれませんね。
日本行政の怠慢
ところで著者は「恐ろしいほどの行政の怠慢」に怒っています。パチンコ産業が日常生活に浸透してから長い年月が経ち、公営ギャンブルの歴史も長いというのに、日本にはギャンブル依存者の統計が全くないというのです。
既に米国では、国家政策委員会がミシガン大学に委託したギャンブル依存者の調査統計が1975年に出ているそうです。
米国の調査を参考にした帚木先生の推計によりますと、日本のギャンブル依存者数は200万人(現在は250万人と推計されています)に上るそうです。
彼は、日本には身近にあるパチンコ店という特殊な存在があるので、ギャンブル依存者の率は欧米より高いとみています。
一時期30兆円市場とも言われたパチンコ業界の貢献度が一番高いことでしょうね。
たかがパチンコ、なれど巨大市場ということですね。
この業界を管理・指導している警察を始めとする役人達が癒着したくなるのも分かりますよね。
依存症からの脱出
さて、それではどのようにしてギャンブル依存症から脱出できるのかということですが、家族を含め大変な道程のようです。
まず、人の助けを借りて依存症から逃れたいという気持ちが本人に芽生えなければどうしようもないというのが実情のようですね。
たとえ数年ギャンブルから遠ざかっていても、一旦やり始めると元に戻ってしまうという厄介なビョウキのようです。
専門医は非常に限られているそうですが、アルコール依存症の治療を行っている病院でも対応できるとのことです。
日本の各地でも徐々に増えてきている自助グループ(GA=ギャマノン)に参加することも大切なことのようです。
GAのメンバーは、法律問題や債務履行のための助言のほか、就業や家族問題についても経験を活かした助言を与えてくれるそうです。
GAは、特別な団体などではなく、ギャンブル依存からの脱却を目指す人々の集まりであり、入退会も自由で会費もないそうです。
なお、「病的賭博」という病気ですので保険の対象になるとのことですから、心強いですよね。
ギャンブル依存症(病的賭博)は病気ではありますが特効薬があるわけでもなく、本人の主体的にギャンブルをやめたいという願いを命綱とし、医療スタッフや自助グループが手助けをするという治療方法しかないそうです。
治療プログラムのゴール
そうした治療プログラムのゴールは、「誘惑にブレーキをかける行動を習慣化する」ことです。
著者が「誘惑に打ち克つには、抽象的な「意志」などに頼るのではなく、」と言っていますように、根性論とは無縁の医学上の観点から開発されたプログラムに沿って治療は行われます。
でも結論は、依存症は一生治らない病気である、ということです。
つまり、再度、一回でもやり始めると即座にハマッてしまうということです。
麻薬みたいなもんですね。
ですから、依存症の人達が精神的に助け合いながら一日また一日とギャンブルをやらない日を積み重ねてゆくことが大切なのでしょう。
法的対処
また、法的対処に関しても解説されています。貸し付け禁止依頼、成年後見制度、自己破産などです。
子供が被る直接的な被害もありますが、借金に共通する大きな問題としてあげられます。
著者の帚木氏は、ギャンブル依存症は
日本では表沙汰にされていない巨大疾患であり、社会のあり方自体を変えなければ根本的な治癒は不可能であると主張しています。
おっしゃるとおりだと思いますね。
著者は如何に日本の行政が遅れているかということを滔々と書いています。
欧州の国々や米国等の対処手段を参考にして、日本でも行政による規制を本格的に強化してゆく必要がありそうですね。
日本社会のダイナミズムは?
確かに日本社会はダイナミックではありませんね。社会において刺激的な展開があれば、もう一方では問題が発生します。
その刺激的な展開を抑えて消滅させてしまうのではなく、そのことによって発生する問題を解決するための新たな社会活動が発生する…
これが社会のダイナミズムなんですよね!
日本の場合は根性論に走ってしまうようで、その保守的すぎる政治行政は臭いものには蓋をしろ式の姑息な手段しかとれていないんです…
行政との癒着が大きな桎梏となっていることは間違いないようですが。
【ご参考】
トランス状態のお話
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